豪州のサッカーリーグのまとめ
豪州のサッカーリーグについてまとめてみました。
◆公式サイト
https://keepup.com.au/news/a-league-men
◆連盟
アジアサッカー連盟(AFC)
◆1部リーグ名称
Aリーグ・メン(A-League Men)
◆所属チーム数
12
◆試合形式
2回戦総当たりのリーグ戦に更に4試合ずつ加えたレギュラーシーズンを行う。そこでの上位6チームがノックアウト方式のファイナルシリーズに進出する。ファイナルシリーズは基本的に1発勝負だが準決勝のみホーム&アウェーで行う。レギュラーシーズンの1位と2位のチームは準決勝から参戦する。
※年間試合数26〜30
◆開催期間
11月中旬~5月下旬
◆移籍期間
不明
◆順位決定方法
勝ち点→得失点差→総得点→レッドカードの数の少なさ→イエローカードの数の少なさ→コイントス(該当チームが2チームの場合に実施)
◆ACL枠
1(レギュラーシーズン1位のチームがグループステージに参戦)
※ファイナルシリーズ優勝チームとFFAカップはAFCカップのグループステージに参戦
◆2部リーグ
なし
◆昇降格枠
なし
◆それ以外の大会
◇FFAカップ(FFA Cup)
Aリーグ・メンのチームとナショナルプレミアリーグのチームが参加するトーナメントの一発勝負の大会。ラウンド32以降が本戦。Aリーグ・メン勢はラウンド32もしくは予選から参加する。レギュラーシーズン8位以上のチームがラウンド32からの参戦となる。
◆平均入場者数
5,745人(2020-2021年シーズン)
◆チーム名
アデレード・ユナイテッドFC(Adelaide United FC)
ブリスベン・ロアーFC(Brisbane Roar FC)
セントラルコースト・マリナーズFC(Central Coast Mariners FC)
マッカーサーFC(Macarthur FC)
メルボルン・シティFC(Melbourne City FC)
メルボルン・ビクトリーFC(Melbourne Victory FC)
ニューカッスル・ユナイテッド・ジェッツFC(Newcastle Jets FC)
パース・グローリーFC(Perth Glory FC)
シドニーFC(Sydney FC)
ウェリントン・フェニックスFC(Wellington Phoenix FC)
ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC(Western Sydney Wanderers FC)
ウェスタン・ユナイテッドFC(Western United FC)
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◆最近の概要
世界中を騒がせている新型コロナウイルスに対して南半球の大陸の要人はナイーブになり過ぎた。
例年と同じ時期の10月中旬に2019-2020年シーズンのAリーグ(Aリーグ・メンの旧称)が開幕したが、ほとんどの国と同じ様にコロナ禍で3月中旬に無観客開催、3月下旬に中断に追い込まれた。その後7月中旬に再開し、8月下旬にはグランドファイナルを迎えた。例年より3か月遅れの閉幕ではあったが、なんとか全日程のコンプリートに成功した。ただしカップ戦となると話は別。通例2月から10月辺りにかけて行われるFFAカップでは、2020年シーズンは予選の段階で大会を打ち切られてしまった。2020-2021年シーズンのAリーグは開幕が12月下旬で閉幕が6月下旬という、日程遅延とそれを取り戻そうと少しでも日程を詰めて公式戦を実施するコロナ禍とのせめぎ合いが見られた。一方2021年シーズンのFFAカップこそ予選の開始は平年なみの2月だったものの、コロナ禍の影響をまともに受けて日程が遅延し、これに豪州独自のコロナ対策である入州制限措置が重なった事を受けラウンド32とラウンド16は地区別に分けて実施された。豪州ではほとんど全ての外国人の入国禁止措置や、特例措置として入国させる場合に課される14日間の強制隔離措置など、他のどの国より厳しいコロナ対策をつい最近まで敷いていた。為政者が「1人でも感染者が見つかればロックダウン」という姿勢なので、デルタ変異株の勃発とともにロックダウンが一気に拡がりカップ戦の日程を後ろにずらさざるを得なくなってしまった。この項の執筆時点でラウンド16が全試合終わっていない。こうなると日程遅延どころか「全日程を終えられるのか?」という疑問すら湧く。
豪州でプレーするサッカー選手にとって最もコロナ禍の影響を受けたのは国際大会である。豪州独自のコロナ対応政策の中に「豪州人の海外渡航禁止」というのがある。この厳しすぎる水際対策のせいでACL参戦チームがACLに参戦しようにも出国できない。つまりシドニーFCとメルボルン・シティFC、ブリスベン・ロアーFCは2021年シーズンのACLに出場できなかった。この影響は2021年だけに留まらず、2021年シーズンに2.25チームあったACLへの豪州勢の出場枠が2022年シーズンには1.5に、更に2023年シーズンには1にまで急減している。国土の面積が湖なみの狭い島国だったりウイルスの殺傷力が高かったりする場合に敷くべきコロナ対応の法令を、大陸で殺傷力の低いウイルスが入った事に対して発令してしまった。このせいでアジアへのチャンスが奪われたチームが数多く出てしまっている。感染者をゼロにする事にこだわり水際対策とロックダウンに重点を置かず、早い段階でワクチン接種に政治家が踏み切っていれば、サッカー選手の夢がこんな風に奪われる事にはならなかっただろう。
Aリーグ・メンを実施するスタジアムで最も収容人員が多いのはウェスタン・ユナイテッドFCのホームスタジアムである36,000人収容のカーディニア・パークである。ここはサッカーの公式戦だけでなく、ラグビーなど数多くの種目の試合も行われる。1つのスタジアムを複数のサッカークラブが取り合うのではなく、複数の種目のチームが取り合うのは、他の国にはなかなかない特徴である。Aリーグ・メンではどのスタジアムでも1万人以上観客を入れられるようになっていて、収容人員の面で大規模・中規模のスタジアムが並ぶ。オーストラリア大陸では内陸部はほとんど砂漠なので、スタジアムは沿岸部に集中している。
Aリーグ・メンは豪州の大会ではあるが、ニュージーランドからウェリントン・フェニックスFCが越境参加している。前述の通り豪州は理不尽な位に厳格な水際対策を敷いているが、ニュージーランドに対しては例外でありこの2国間でトラベルバブル協定(一定の条件下で国の往来を許可する協定)を結んでいた。ただし豪州でのデルタ株発生でこのトラベルバブル協定は骨抜きになってしまった。現在ウェリントン・フェニックスFCは豪州にある収容人員23,000人のウォロンゴン・ショーグラウンドを事実上のホームスタジアムにしている。ニュージーランドのクラブはAFCではなくOFCの管轄なので、ウェリントン・フェニックスFCは豪州の大会で好成績を収めてもACLやAFCカップに参加できない。
伝染病対策の面で非常にもろい面を持つAリーグ・メンではあるが、このリーグには欧州人が中心に、特にイングランド人が数多く在籍している。日本人選手もサイ・ゴダード(セントラルコースト・マリナーズFC)、太田宏介(パース・グローリーFC)、小川慶治朗(ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC)、今井智基(ウェスタン・ユナイテッドFC)の4人が豪州の国内リーグを活躍の場に選んでいる。豪州の国内リーグの特徴としてサラリーキャップ制がある。チーム全員の選手の年俸合計の上限規制を敷くこの制度は、かつて国内リーグが消滅してしまった苦い過去を繰り返さないようにする為のものだろう。ただしサラリーキャップ制には例外枠があり、このくくりから外れるマーキー・プレーヤーも存在し、集客の一助となっている。例えば広州足球倶楽部(元・広州恒大)でプレーした事がある元イタリア代表のアレッサンドロ・ディアマンティ(ウェスタン・ユナイテッドFC)はマーキー・プレーヤーの一例である。お金の流れの話に関して付け加えれば、2019-2020年シーズンまで韓国の現代自動車がAリーグの大会スポンサーだったが、現在の2021-2022年シーズンの大会スポンサーはいすゞUTEオーストラリアである。そしてそれまでは男子サッカーリーグを「Aリーグ」、女子サッカーリーグを「Wリーグ」と呼んでいたが、2021-2022年シーズンから男子部門を「Aリーグ・メン」、女子部門を「Aリーグ・ウィメン」に呼称を変えた。これにより女子サッカーも「Aリーグ」と名乗れる様になった。
豪州ではオージーボールやラグビー、クリケットの人気が絶大である。テニスの全豪オープンが行われる1月には、毎日テニスの試合が放映される。豪州でのサッカーの人気は高くない。それどころかかつては民族抗争の場ですらあった。民族にちなんだ名前ではなく都市名をチーム名に持っていくAリーグ側の方針もあり、豪州のサッカーにはかつての様な野蛮さは無くなっている。
気になる豪州のコロナ対策だが、現在は去年や今年の前半より幾分緩和されている模様(外国人でも条件付きで入国可、入国時の隔離期間の短縮など)である。これは現在の日本の基準より緩やかだ。ワクチンが普及した事で、政府はコロナ対策の軟化に踏み切った。
今まで耐えていた分、これから豪州のサッカー界が伸びていく事が予想できる。こうした国でもサッカー選手が夢を叶えられる様に願っている。
◆最終更新日時
2021/12/18
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