これからのサッカーのある日常を語ろう

老若男女が集うスタジアムの入場口。
クラブならではの飯を楽しみに長蛇の列をなして並ぶスタジアムグルメの屋台。
大旗が振られ密にサポーターが立ち、声を張り上げて飛び跳ねる迫力あるゴール裏。

この当たり前だったJリーグの週末が、遠い彼方の世界に追いやられている。

言うまでもなく、世界中を席巻しているコロナウイルスの影響だ。

現在、非常事態宣言が日本全国に拡大されて発令されている。

もちろんJリーグは延期中。
コロナウイルスが大人しくならないので再開予定日が迫っても再開の見込みが立たず、Jリーグは3回延期になった。

公式戦が「再々延期」になっている状況では、クラブもチーム練習どころじゃない。

もちろんこれは他の国でも例外ではない。
現在国内リーグを開催しているのはベラルーシや台湾、タジキスタンといったごく一部の国または地域だけ。
この状況ではとてもじゃないが「サッカー万歳!」というメッセージを出す気にならない。

今巷で出されているメッセージは「スタジアムに行こう」ではなく「Stay home」

家から出られないサポーターのためにオンライン対談やリフティング動画をアップするなどして、クラブや選手があの手この手で工夫を凝らしている。

それでも練習試合の動画を上げる形で選手がサッカーをしている姿をサポーターに見せる事は、現状では絶望的だ。

なぜなら「コロナウイルスに感染していない」という証明ができないからだ。

コロナウイルスはインフルエンザウイルスとは似て非なるもの。
インフルエンザにはワクチンや治療薬で対応できる。

新型肺炎に効くワクチンはまだ認可されていない。
治療薬の方も、まだ確固たるものがない。
肺の血管を詰まらせたりT細胞を破壊したりする報告が上がっているなど、インフルエンザウイルスと異なる挙動がコロナウイルスにはある。

こういう世紀の伝染病は、ワクチンや治療薬が認可されて普及されるまで収束しない。
それまでは人同士が濃厚接触しないように不要不急の外出を制限して、医療崩壊を防ぎながら時間を稼ぐしかない。

つまりサッカーのある日常が戻るまで、かなりの時間がかかる。

少なくとも数ヶ月単位ではない。
元どおりになるまで何年もかかるだろう。

そんな凄まじい威力を見せているコロナウイルスが、ある日突然根絶されるなんてことはありえない。

コロナの勢いが下火になったからといっていきなり「満員のスタジアムでJリーグ再開!」という具合には、おそらくならない。

Jリーグチェアマンの村井満も無観客試合からのJリーグ再開を視野に入れている。

コロナウイルスが流行するまでは、無観客試合と言えばクラブが重大な違反を犯した場合に主催者側が課す経済制裁を意味していた。

今回の場合は、クラブも選手もサポーターも悪くない。
それでも「無観客」というのは理不尽だが、背に腹は変えられない。
いきなりスタジアムを満員にして、新型肺炎が再び蔓延でもすれば元も子もない。

時間が経ったとしても、すぐに元どおりにはならない。

満員とは程遠い、サポーター同士の間隔を空けてソーシャルディスタンスを保つガラガラの観客席になるだろう。

そして大声禁止。
更にはアウェーサポーター席の閉鎖。

バチバチした迫力ある応援とは程遠い。

コロナウイルスが日本上陸したばかりの頃にこの案がJリーグの中から出された。
「迫力が損なわれる」と、一部サポーターが反発した。

ただ長い中断期間を経てようやくJリーグ再開にこぎ着けるタイミングでは、これらの規制に反発する者はさすがにいないだろう。

大声を上げて飛沫を飛ばすことも、潜在感染者が遠隔地の人混みに移動することも、コロナウイルスの爆発的増加に直結する。

制約を受けるのは試合中のスタジアムだけではない。

スタジアムグルメを出してきた屋台の風景も様変わりするだろう。
長引く自粛に耐えられず、閉店の憂き目に遭う店もあるはずだ。
屋台出店にこぎ着けることはできても、これまでの規模の客と収入を集めるのはしばらくは無理だ。

試合が終わっても「近くの酒場で試合の余韻を」という訳にはいかない。
その頃はサッカーバーでさえまだまだ観戦困難だろうから。

ここに至るまで、経済的に深傷を負っているクラブばかりだ。
Jリーグが再開してもサポーターを多く呼べないなら、そのまま手をこまねいていれば傷が更に深くなる。
観客席に一部入場制限が敷かれている期間限定で、チケット代の値上げに踏み切るクラブも出るはずだ。

Jリーグ再開のタイミング次第では、試合数を削減する必要性も出てくる。
そうなると全てのチームに公平な状況での運営は望めない。

中断前に楽しんでいたサッカーのある日常からは、程遠い。

だが、この過程はおそらく避けられないだろう。

大事なのは、カッコ悪くてもいいから生き延びることだ。

サッカーを観られるのは幸せなこと。

1歩ずつ復興への道を歩めば、元どおりになる日は来る。

老若男女が集う入場口。
長蛇の列をなすスタジアムグルメの屋台。
迫力あるゴール裏。

サッカーのある日常が戻る日は、必ず来る。

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