ダイナミックプライシングにどう向き合うべきか?
Jリーグ開幕戦のチケットが暴騰している。
2月21日に神奈川県のShonan BMWスタジアム平塚で行われるJリーグ開幕戦の湘南ベルマーレvs浦和レッズ戦では、アウェーサポーター側ゴール裏立見席が4100円するという。
なにこのけたたましい価格設定?
平日開催にもかかわらず、ゴール裏を4000円以上で売るって?
埼スタではこの半分くらいの値段で買えたのに。
「ダイナミックプライシングなんてクソくらえ」
こういう声がレッズサポーターから上がっている。
この声には心情的には十分に理解できる。
ただし対戦カードによってチケットの価格を変える事自体には、俺は賛成だ。
理由は転売屋の利益圧縮のため。
ホーム開幕戦、優勝チームや降格チームが決まる試合のような注目を浴びるカードには転売屋が現れる可能性がある。
転売屋がチケットを狙っている時に他の時のカードと同じ価格でチケットを売ってしまうと、転売屋にチケットを買い占められてしまう。
クラブは「絶対に転売屋から買うな」と言う。
だが「そのカードはどうしても自分の目で、現地で観たい」と願うサポーターもいる。
もしその時、チケットの入手手段が転売屋経由しかなかったら?
こういう経緯で転売屋からチケットを買ってしまったサポーターを責めることは、俺にはできない。
問題なのは「跳ね上がった価格のチケットを払った際の跳ね上がった利益は、どこに向かうのか?」だ。
クラブが2千円で売っているビジター自由席のチケットを転売屋が買い占めて、1万2千円で売り出したケースを想定しよう。
サポーターが転売屋からチケットを買ったとする。
差額の1万円は転売屋の利益になる。
転売屋、更に言えば古典的な姿ではダフ屋の利益は暴力団や半グレのシノギになると言われている。
少なくとも今挙げた輩はサッカーを愛する人たちではない。
そういう輩が金を持つと治安が悪くなったり、仕事をしづらくなったりして、ロクなことにならない。
一方で他のカードなら2千円で販売していたビジター自由席のチケットを、クラブがダイナミックプライシングを導入して1万2千円で売り出したとする。
サポーターがこのチケットを買ったとする。
差額の1万円はクラブに入る。
この金はサッカーを盛り上げるのに使われる。
注目度の高いカードでは、どっちみち2千円程度でアウェーサポーターがゴール裏のチケットをすんなり買えるとは思えない。
転売屋に金が流れるのがいいか?
クラブに金が流れるのがいいか?
同じ金が流れるなら、どちらを選ぶか?
さて、物事にはなんでもメリットとデメリットがある。
転売屋がチケットを転売する際のデメリットとは何か?
バレれば社会的信用を失うことである。
このデメリットはデカい。
つまりこのデカいデメリットを上回るメリットが有れば、転売屋は転売に踏み切る。
メリットとはもちろん利益が大きいことだ。
注目カードでクラブがビジター向け自由席の価格を上げて転売屋の利益を圧縮すれば、転売屋のメリットはデメリットより小さくなる。
転売屋がデメリットを引き受けてまで転売行為をする意味がなくなる。
だから俺は基本的にチケットの価格変動制には賛成だ。
ただし価格変動制にも色々ある。
ホーム開幕戦でもリーグ終盤でもないのに、浦和レッズサポーターの動員力の強さを逆手に取り、対戦相手のクラブが浦和戦でビジター向けのチケットをけたたましい価格に設定することも考えられる。
こういうのを認めてしまうと俺はもちろん、他のレッズサポーターがアウェーに遠征しづらくなってしまう。
「足元を見て値上げする輩に対しては、一発かましてやりたい」
こういう気持ちも俺にはある。
本来、プロスポーツの試合はホームチームのサポーターやスポンサーからの金でやりくりするものだ。
アウェーチームのサポーターの金をアテにしてクラブを運営するのは、プロスポーツクラブとしては健全な姿とはいえない。
ホーム開幕戦は第1節や第2節に行われる。
優勝チームや降格チームが決まるのは、入れ替え戦に行くチームを除けば大体最後の4節、つまり第31節から第34節の間に決まる。
裏を返せば第3節から第30節までの試合では、自由席の価格に上限規制を設ける方が良い。
付け加えるなら、アウェー遠征する際に対戦相手がチケット代をけたたましい価格設定にすることについてサポーターが憤るのは当然だ。
だからと言ってダイナミックプライシングを否定したり、他のサポーターに否定するように呼びかけたりするのは、あまり賢いやり方ではない。
なぜか?
相手がしかけたダイナミックプライシングに対して「ウチらは反対!」と訴える。
対戦相手は「ウチらは賛成」と返す。
そうなればこの喧嘩は負けになるからだ。
アウェーの時にもホームの時にも、対戦相手のサポーターの多い中で選手が闘わなければならない状況を作ってしまうことになる。
ダイナミックプライシングは世の流れだ。
今さらこの流れに逆らうことはできない。
それならどう向き合うべきか?
どうせ逆らえないなら、無理に逆らおうとするのではなく、その流れの中での最善手を探ることだ。
レッズサポーターの足元を見て価格を釣り上げる相手には、埼スタ開催時にもその相手のカードの時にはビジター向けのチケットを同じ価格に設定するのが一番だと俺は思う。
価格変動制には価格変動制でやり返そう。
さて、Jリーグが始まるということは、ルヴァンカップが始まるということでもある。
ルヴァンカップはスカパーで放送される。
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