その気のない者を引き留めてはいけない

俺はこの選手にデジタルタトゥーを掘る気はない。
だから名前と所属クラブをぼかして、一般論としてこの記事を書かせてもらう。

ある外国人選手のインスタグラムに、熱狂的なサポーターを多く抱える所属クラブのユニフォームでプレーしている写真と一緒に、こんな文章が投稿がされていた。

原文は外国語なので、日本語に訳す。

「クラブに帰りたくない気持ちになったのは、俺のキャリアで初めてだ。それでもサッカーを愛している。それでも今年は俺の年だ。それでもポジティブに行く。それでも考えは変わらない」

「クラブに帰りたくない」と、自分の気持ちをこれ以上考えられないくらい明確に断言している。
しかもこれは「キャリアで初めて」

それほどこの選手がこのクラブに失望している。

この選手は2年前にこのクラブに完全移籍の形で移籍した。
彼が在籍した2年間に、監督が3回変わっている。

あくまで俺の意見だが、ここまでハッキリ「クラブに帰りたくない」と言い切った以上、そのクラブの選手としての彼はもう終わり。

俺はこの選手を批判する意図はない。
むしろこういう投稿をしないでいられない彼に同情している。

なぜ、俺はこう考えるか?

男女関係にたとえると分かりやすい。

これは2年間付き合った彼女に「あなたとこれ以上付き合いを続ける気はない」と言われるようなモンだ。

このセリフを言われた時点で、終わりだ。

この彼女は衝動的に別れ話を切り出したワケではない。

その2年間の間に感じていても、言うに言えない苦い思いがある。

彼にそれとなく言っても、一向に聞く耳を持たない。
付き合いを続けるには、そういうのと向き合い続けなければいけない。

それがどうしても我慢できない。
心の中で段々彼への愛情が冷めていく。

その思いを友人に相談して、自分の中で今後の方針を徐々に決めてきた。

もちろん彼とは良い思い出もある。
別れてしまったら、思い出を彼と共有できなくなるのは辛い。

だがそれらを吹っ切る決心がようやく付いた。

こうした経緯を経て、彼女は別れ話を切り出している。

言われた彼には、こういう経緯が分からない。
「なぜこんな事を突然言い出すのか?」となる。

たとえばこの彼はこの2年間で職を3回も変えているとする。

「この会社、使えねえ」と言って転職を重ねてきた。
それでいてその彼が仕事に凄く打ち込んでいたかと言えば、そんな事はない。
実際は上司の目を盗んで、職場のパソコンでマインスイーパーをやっていた。

もちろんこの彼は、職場でのマインスイーパーの話を家ではしない。

なぜか分からないが、特に仕事の突っ込んだ話をしない。
それなのにただ転職を繰り返していることについて、彼女は不安を覚えている。

「会社を見限っている風に彼は言ってるけれど、彼が会社に見限られて居づらくなっているのでは?」

仕事の具体的な話を一切せず、家ではただゴロンとケータイでゲームをいじっているだけ。

「そんな彼の姿、どう思う?」と女友達に彼女が訊いたとしてもおかしくない。

友達は当然、この彼に良い印象を持たない。
「そんな甲斐性のない彼、さっさとポイしちゃいなよ」と言われるのがオチだ。

こうして彼女が決意を固める。

ここまでの一切合切を、彼は知らない。
なぜなら彼女が彼について悩んでいる間、彼はずっとゲームし続けてきたのだから。

こうして別れ話を切り出された彼は、ぶったまげる。

こうなったら、普通は終わり。

時が経ってヨリを戻す例もあるにはある。
ただ別れ話を切り出されたこの時点で、引き留めるのに固執するのは、得策ではない。
「気持ちの分からないイタイ奴」認定されて、良い思い出もなかった事にされるだけだ。

辛いけど「別れたい」という彼女の気持ちを受け止めて、別れるしかない。
「今後の新しい恋に向けての改善点は何か」を彼氏の側が自問自答して、新たな恋に向かうしかない。

これが選手とクラブの関係だと、こんなに簡単にはいかない。

違う点は「契約が残っていれば、そのクラブに在籍しなければいけない」という点だ。

たとえそのクラブでプレーしたくなくても、契約が残っている以上そのクラブに残らなければいけない。

クラブとの契約が残っているからだ。
それ以上でもそれ以下でもない。

そういう選手を残せば、クラブへの士気の低さが練習場やロッカールームに伝染する。
貴重な外国人枠をそういう選手に使い続ける事にもなる。
今後試合でどんなプレーをしても、選手やサポーターから「クラブに戻りたくないと投稿してた選手だ」という目で見られることになる。

そもそも本当にクラブに残りたければ「クラブに戻りたくない」という投稿をSNSに上げない。
万が一間違って上げたとしても、すぐに謝罪のメッセージを上げるはずだ。

2年間の積年の思いがあり、親しい人に相談し、自分の中で結論を出している。

「クラブに戻りたくない」というメッセージを上げた者をクラブに戻すのは、誰の幸せにもならない。

こういう場合、クラブのフロントが所属クラブを変える手助けをしてやるのが思いやりだ。

選手にああいう投稿をさせる程の事を、クラブがしてきたのだ。
だからクラブが彼に代わる良い選手を獲りたければ、この2年間の反省点を洗い出して改善するしかない。

「その気がないと勝手に決めて、追い出すな」
「オフにクラブハウスで練習してる選手に、やる気がないワケねえだろ」

これらの意見も分からないワケじゃないが、一応反論しておく。

選手はクラブの一員でもあるが、個人事業主でもある。

選手はクラブのために闘わなければいけない立場だが、個人事業主としての自分の株を上げなければいけない立場でもある。

積年の扱いに疲れて愛想を尽かした選手が、他のクラブのスカウトにアピールするために所属先のクラブハウスで練習する場合がある。

それに彼が所属しているのは、熱狂的なサポーターを抱えているクラブだ

そういうクラブに2年間もいた者があの様なメッセージを残せば、大抵のサポーターがどういう印象を受けるかぐらい分かるはず。

もし「クラブに残りたい」と思っているのにあの様なツイートをしたとしたら、「2年もそこにいて、サポーターの想いも分からないほど、お前は馬鹿なのか?」と言われる。

この場合も、やはりその選手はクラブを出なければいけない。

先ほどの男女関係の例にたとえると、別れる気がないのに彼女が「彼氏募集中!」と無邪気にインスタに上げるようなものだ。

彼にしてみれば、「馬鹿にされている」と感じるはずだ。

いずれにせよ、選手に振られたというメッセージを、このクラブのフロントは事実として受け止めるべきだ。

そういう者を無理に引き留めても、良いことは何もない。

そのクラブの幸せのためにも、彼の幸せのためにも、彼をできるだけ心良く他のクラブに送り出すべきだ。

「ここで選手を切ると、良い選手が来ないから困る」

それは「男側」に魅力がないからだ。
他の「女側」に振り向いてもらえるように、男子力を上げるしかない。

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