浦和レッズは文化だ(前編)

浦和レッズの今年の最終節の試合後に、恒例の挨拶が有った。

レッズの社長である立花洋一の挨拶と、それに続き今年限りで退団する岩舘直と森脇良太の2人の選手の挨拶だ。

立花の挨拶と森脇の挨拶の時に、ブーイングが起きた。

そのブーイングの性質が真逆だ。

立花へのブーイングには殺気がみなぎっていた。
話し始めても話し続けても怒りのブーイングは止まなかった。
立花を「敵」として認識しているサポーターは多い。

人気選手であるせいか、森脇へのブーイングは愛情あふれるものだった。
彼が話している最中はサポーターは基本的に静かに聴いていた。
森脇にブーイングが起きたのは、少々刺激的な事を彼自身が喋った時だけだった。

なぜなのか?
なぜここまで違うのか?

後で挨拶の言葉を振り返って、その理由が分かった。

「素晴らしいサッカーというスポーツを、楽しんでいきたい」

自分のあるべき姿について、森脇は具体的に語っていた。

一方で自分の、つまりレッズのあるべき姿について社長である立花はこう語っていた。

「浦和レッズのサッカー、コンセプトを作り上げ、そのコンセプトを実践し、成長していくのが使命」

「コンセプト」という抽象的な横文字で語っていた。

俺はこれを聞いて「社長の就任会見か?」「外部から社長として招聘されたのか?」と思った。

ところがそうではない。

浦和レッドダイヤモンズ株式会社の社長に立花が就任したのは今年2019年の2月。
2018年2月から副社長として就任し、4月からは主に強化を担当していて2018-2019年のオフの補強は彼が担当したという。
しかも彼がレッズにやってきたのは2016年の11月。非常勤取締役としての就任だった。

3年以上内部にいたのに、レッズのあるべき姿を「コンセプト」というふわっとした言葉でしか表現できないのか?

社長に就任してもうすぐ1年経とうとしているのに、まだ「コンセプト」さえ作り上げていないのか?

情けない。
ただただ情けない。
非常に薄い挨拶だ。

ブーイングの意味が真逆なのは「現実と格闘しているか、していないか」だからだと俺は感じた。

立花は現実と格闘していない。
それどころか「チームの戦力の老朽化」という現実と向き合ってすらいない。
向き合っていれば、今頃になって「これからコンセプトを」とかいう馬鹿な事にはならない。

「コンセプト」は、社長が一番最初に決めるべきものだ。

就任前に決めておくのが理想だ。
どんなに遅くとも就任直後に決めていないと。

コンセプトに沿ったサッカーを社長が掲げる。
コンセプトに合った監督や選手を獲得していく。

コンセプトに沿って、回りが動いていく。
人にしても。サッカーにしても。

選手の補強に本格的になるというのに、そんな事さえ決まっていないなんて!

非常に情けない。

一部報道では、現監督の「組長」大槻と契約延長を決めたのは、他に声を掛けていた日本人監督候補全員に断られていたからだという。

更に外国人監督に声をかけない理由が「色々問題が起きる外国人監督はもうこりごり」だからだともいう。

社長が自分のサッカー観を持とうともしない。
外人に声を掛けるのもめんどくさい。
監督はコロコロ変わる。
それなのに非常に高い結果を求められる。

外部にいるのに「そんなチームで監督をやりたい」と考える方がおかしい。

立花は上司に言われないと何も決められないのか?

社長のようなトップにとって大切なのは、決断することだ。

そもそも現場で解決できる程度の問題は、現場で解決している。
現場で解決できない難問が会議室に上がる。
会議室でも解決できない超難問が社長室に行く。

正直「自分でも答えがわからない」と社長が感じる問題は山ほどあるだろう。

誰も決められないこういう超難問に対して、たとえサイコロを転がす感覚でも良いから決断する。

その中には誰かをレッズから追い出したり一部のサポーターを泣かせたりする様な非常に厳しい選択肢もあるはずだ。

その選択肢を採る必要が有れば、決断してその理由を具体的に説明する。
決断への責任は自分が取る。

それが社長の役割だ。
その決断ができない者に社長の意味はない。

「コンセプト」の中身を具体的に説明すれば、更に反発するサポーターが山ほど出るだろう。

それでも何万人もの怒れるサポーターの前できちんと説明して、荒波の中で改革を断行するのが筋だ。

社長が決断しなければ、当然他の誰も決断できない。
こうして問題が放置される。
ただただチームが老いていく。

立花に限らず、歴代のレッズの社長は「浦和のコンセプトは何か?」という初歩的な問いに対してさえ誰も答えなかった。

彼らがサラリーマン社長だからだ。

レッズのフロントに入ったのは、三菱で長く勤めた年配の男性だけ。
若い個人の事業家を要職に受け入れる風土は、残念ながらない。

外国人の補強は他のJリーグのクラブの使い古し。
新たな取り組みとは無縁。

横浜F・マリノスのように欧州のクラブと業務提携したりはしない。
北海道コンサドーレ札幌のように外部から社長を招聘することもない。
ヴィッセル神戸のように補強に大胆に金を使ってワールドカップ出場選手を海外のメガクラブから引き抜くこともない。

清水エスパルスのようにサポーター向けの商品の値上げをした理由ついて、現状の数字を基にして具体的に説明することもない。
サガン鳥栖やVファーレン長崎のように女性が社長に就任するなんて夢にも思えない。
栃木SCのようにIT会社を立ち上げた者を自らの要職に引き抜く事もない。

レッズの歴代の社長がやってきたのは、レッズのサッカー部の部長の延長でしかない。

後編に続く

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