入社してすぐ辞めるのは悪いことじゃない

新元号発表に沸き立つ裏で、入社式当日に退職宣言をした人のツイートが話題を呼んでいる。

この人は金融系の会社で働くつもりだった。
3回の入社前研修を受けていた。

その研修の内容が絶望的すぎるのが、入社即退職の理由だという。

この手の発言は、少し前なら格好のターゲットになっていただろう。

「堪え性がない」「今の若者は」「社会人失格」

数年前から間違いなくこういう言葉が並んでいたはずだ。

だが今、この人のツイートにこういったネガティブなリプライは全くない。
むしろ素早い判断を褒め、転職活動を応援するリプライが多い。

ちなみに研修の内容といえば、本人のツイートを要約すると

◆社歌、社訓、「はい!」の返事を大声でする練習に時間を割く(これ以上ない大声でも、やり直し)
◆寺での研修もある

要するに上司の命令に絶対服従させる教育である。

見事なまでに社員に問題点を検証、判断させる内容ではなくなっている。
それどころか自主的に検証、判断するのはタブーになっている雰囲気すら感じる。

この手の会社に入社したら、意見は反抗反逆行為として捉えられてしまうだけだ。

金融系で異様なのは、この会社だけか?
他の大部分の会社は、話せば分かる会社なのか?

俺はそうは思わない。

俺の知る範囲内で、金融系の業界の流れを簡単に説明しよう。

1990年頃のバブル期では、金融系は「花長風月」の代表格と言える産業だった。

花長風月とは

花=花形産業
長=長期休暇
風=美味しい社風
月=高い月給

この時に社会人だった老人、特に社会人になってから最新の情報収集をシャットアウトした人達は、いまだに金融系をこの価値観の延長で見ている。

一般人が銀行を使う目的は、なんだろうか?

預金を出し入れするか。
融資を貰いに行くか。

この2種類くらいしかない。

ものすごく乱暴に分類すれば、金融系は銀行系の会社と証券系の会社とサラ金系の会社の大きく3通りに分けられる。

銀行系はもちろん預金の出し入れと融資をするための場所だ。
金融系は前者の預金の出し入れの変形になる(金の代わりに証券や株が出てくる)。
サラ金系は後者の融資のための場所の変形だ。

今、銀行預金の金利は非常に低い。

リアル店舗を抱えている銀行の年平均利回りは、大体どこでも普通預金が0.001%。
定期預金でさえ0.01%だ。

苦労して1000万円を銀行の普通預金に預けた。
それでも1年間で増える金額は、たった100円。
たったの100円!

途中で下ろせない定期預金に預けたとしても、1年間で1000円しか増えない。

しかも何か有って銀行が大損害に遭っても、預金者の預金が補償されるのは1000万円まで。

これでは馬鹿馬鹿しくて銀行に金を預けなくなる。

バブルの頃は放っといても不動産の値段が上がっていった。
だから銀行は企業にジャンジャン融資した。

バブルが弾けて久しくなり、会社が潰れるのが当たり前になった。
融資先の目利きの手段を持たない銀行員は、融資をすることを忘れた。

さて、今は変化の激しい時代だ。
キャッシュレスの流れが来ている。

ペイペイ。メルペイ。アリペイ。アップルペイ。
最近流行りの「○○ペイ」も現金を使わない立派なキャッシュレスだ。

ペイペイでは現在決済利用時に10〜20%が返ってくるキャンペーンを行っている。
メルペイでは飲食店を利用する時に無料か大幅割引になるクーポンを配布している。
アップルペイも食べログ掲載店舗の利用で最大15%オフになるなど、実に多種多様なキャンペーンを実施している。

かたや0.01%、下手すれば0.001%しか金利が増えないサービス。
かたや10〜20%キャッシュバックが当たり前。

どちらに金を預けたくなるだろうか?

つまり銀行などの金融系に預金をする意味がなくなっている。

中国発のアリペイでは、芝麻信用といって過去の決済履歴などからその人の信用度をスコア化する「信用スコア」が普及している。

信用スコアが高い人に融資すれば、貸し倒れになる心配をしなくていいというわけだ。

この信用スコアがペイペイ、メルペイ、アップルペイ辺りに普及するのは時間の問題だ。
特に既にメルカリで売買のデータが溜まっているメルペイが早めに導入するのではないか?

書類を何枚も書かせてハンコを何箇所も押させた挙句、滅多に融資してくれない所。
信用スコアという明確な指標があり、それさえクリアすれば融資してくれる所。

あなたが事業を始めるなら、どちらから融資してもらいたいか?

融資の面でも、金融系の存在意義がなくなっている。

つまり旧来型の金融系の会社は、大ピンチだ。

金融系はバブルの頃は花長風月の代表格だった。
現在は転職人気ランキングの上位40社の中に金融系の会社は入っていない。

地方に行けば採算の取れない支店が潰れている。
店に入れば、ノルマに追われた哀れな銀行員が年配の人をターゲットに高額物件を吹っかける。
三菱UFJも三井住友もみずほも数千人単位の従業員をリストラしたばかりだ。

どう考えても金融系に明るい未来は見えない。

トップの経営方針が明らかに間違っている。

それを認めてしまったら、従業員からの求心力は崩壊する。
だから何があっても「はい!」と言わせる絶対服従ぶりでゴリ押しするしかなくなる。

だから冒頭の人が入社式の日に退職するという判断は、俺は正解だと思う。

更に書けば、こういう大胆な判断を迅速に行うこの人は、起業家向きのキャラクターだ。

普通の人は、研修でパワハラに遭っても即座に辞職するという判断ができない。
どうしても世間体が邪魔をする。

その悪い意味での世間体が、この人には無い。

さらにこの人は、業界のリサーチ不足を自分の責任だと認めている。

ちゃんと自己検証ができている。
ちゃんと自分のPDCAサイクルを自分で回せている。

決断力と検証能力は、起業家には絶対に必要な能力だ。

それが備わっているこの人は、フリーランスや起業家としてもやっていけるだろう。

サラリーマンとして勤めながらも「ソロ活動」を並行するやり方を模索してみるのは、どうだろうか?

もちろん最初から成功するとは思えない。
むしろどういう生き方をするにせよ、沢山失敗するだろう。

ただ失敗から何かを学ぶ能力さえあれば、大丈夫だ。
最後には成功を収めているに違いない。

こういう良い意味での馬鹿者は、俺は応援したい。

がんばれ!

※本ブログの広告からの収益金の1%を多発性硬化症や視神経脊髄炎の患者の支援団体であるMSキャビンに寄付いたします。

◆こちらの記事もオススメ
日本の学校教育とは軍隊教育の延長だ
お上が全て正しくて下々が全て悪いのか?
レストランで薬を飲んではいけないのか?

Follow me!