お上が全て正しくて下々が全て悪いのか?

我那覇和樹のドーピング冤罪事件を昨日の事の様に覚えている。

我那覇は感冒の治療のために、練習後に当時所属していた川崎フロンターレのチームドクターから点滴治療を受けた。

これがどういう訳かサンケイスポーツの記者が「我那覇に秘密兵器 にんにく注射でパワー全開」とあたかもJリーグにドーピングが横行しているかの様に書きたてた。

本来、ここでJリーグはその記者を呼んで注意し、謝罪記事を書かせなければならなかった。

だがJリーグのドーピングコントロール委員会は、サンケイスポーツと一緒になって「我那覇はドーピングをやった」と問題視してしまった。

ドーピングコントロール委員長の青木治人は我那覇に全く反論の機会を与えなかった。

我那覇にはドーピングの罪で6試合の出場停止処分が課された。
川崎フロンターレには1000万円の制裁金が課された。

これ、我那覇が悪いのか?

「悪いのは我那覇だろ!」

処分が課された当時、我那覇を批判する者がかなりいた。

批判する者は「お上はいつも正しい」と信じている。
「お上だって間違う事はある」なんてこれっぽっちも考えない。

当時のJFA(日本サッカー協会)の会長だった川淵三郎でさえ「マスコミが騒いじゃったから」と「お上」を疑おうとしなかった。
いかに我那覇が悪者として扱われていたか、想像に難くない。

ドーピングに抵触しない薬だけで風邪の患者を治療するのは、もちろん可能だ。
WADA(世界アンチドーピング機関)が定める禁止薬物リストには、にんにく注射の成分は含まれていない。
注射を受ける行為も禁止されていない。

ただし当時のJADA(日本アンチドーピング機構)の規定には、注射を受ける行為そのものが事前の許可が必要だった。

Jリーグは今も昔もJADAの規定に基づいて運営されている。

但しJADAの規定は、WADAの規定に完全に準拠されたものでなければならない。

JADAにローカルルールなど有ってはならない。

ニンニクの成分を摂取するのを禁じるのも、注射を禁ずるのも、完全にJADAのローカルルールだ。

このローカルルールに基づき、我那覇と川崎フロンターレは懲罰を受けた。

この懲罰がまかり通ると、選手は治療のために点滴を受けようにも「後でドーピングしたと言われる」と怯えて点滴治療を受けられなくなる。

後に我那覇は3000万円を超える私財を投じ、CAS(スポーツ仲裁裁判所)という国際機関に訴えようとした。
この行為には多くの人達が賛同し、募金が集まった。
俺も我那覇を救う為の募金箱を見かけた事がある。

この頃にはさすがにJADAも「我那覇はドーピングではない」と声明を出していた。
それにもかかわらず、青木はなんだかんだ言い訳をして一度下した裁定の撤回を拒み続けた。

我那覇は「JADAやJリーグの規定がおかしい」と考え、CASへの提訴に踏み切った。
多額の金を投じ、日本語を一切受け付けない機関で真実を訴えた。

CASは「我那覇には全く過失はない」と裁定した。
我那覇への処分を取り消し、救済措置を認めた。
CASはJリーグにCAS史上最高額の2万ドルのペナルティーを課した。

CASが処分を取り消した以上、Jリーグは我那覇にも川崎フロンターレにも処分を取り消さなければならない。

当時のJリーグのチェアマンだった鬼武健二は我那覇への処分は撤回したという。
我那覇個人に対しては誠実に対応するとも言った。

だが既に執行された6試合の出場停止処分をどうやって撤回したのか?

しかも鬼武は、川崎フロンターレから徴収した1000万円の制裁金の返還は拒否した。

日本の司法制度で同じことをやれば、強制執行の対象になる。
それほど悪質な行為を鬼武はしていた。

それにもかかわらず、メディアは一斉に「川崎への制裁金は返還されず」と見出しを打った。

これで一般人は「Jリーグは悪の巣窟だ」という印象を持ってしまった。
CASは「無実」とハッキリと結論を出し、我那覇自身は何も悪いことをしていないにもかかわらずだ。

川崎フロンターレへの1000万円の制裁金は、10年以上経った現在でも返還されていない。

お上だって間違うことがある。
自身の保身が絡めば、間違いを間違いだと認められなくもなる。

それでも一度処分が下れば、いつでも下々の者が悪いのか?
処分を下す側は何も悪くないのか?

こういう事を去年の天皇杯決勝で浦和レッズに数々のペナルティーを課した事件で感じた。

もちろん「レッズは何も悪くない」と言うつもりは俺はない。

天皇杯では中立的運営が求められていたのに、主催者のJFAに無許可で会場の埼玉スタジアム2002にレッズサポーターを引き入れて応援物品の持ち込みや設置作業を認めていた。

これは改善しなければいけない。

ただ会場の外で発煙筒を焚いた事で、JFAからいきなり懲罰を受けさせられる筋合いは無い。

外で発煙筒を焚く行為は、さいたま市の条例には違反している。

だから警察から処罰を受けてしまう筋合いはある。
だが行為自体を禁止する明確な規定が無いのにJFAから処罰を受ける筋合いはない。

そもそもさいたま市の条例にそんな規定があるなんて、今回の件で俺は初めて知った。

知らない事は教えればいい。
いきなり罰を下すことはないじゃないか!

発煙筒を焚いたであろう現場に、普段の日に後で行ってみた。
現場は歩行者が誰も歩かないような所だった。
条例の件を除けば「発煙筒が他人に迷惑をかける」とは考えられないくらい通行量の少ない場所なのだが。

もし警察かどこかからJFAに通告を受けたなら、それは会場の周辺で火器の使用を禁ずる条文を明文化しなかったJFAの責任だ。

具体的に明文化してからレッズを処罰するという話なら、それは受け入れる。

曖昧な規定だと「レッズ相手なら何でも有罪」がまかり通る事になる。
それは酷すぎる。

3Dコレオの件にしてもそう。

JFAに無断で掲げた事で、なぜ懲罰を受けなければいけないのか?

JFAが「危険な行為だ」と認めたなら、「この行為は危険だから禁止する」と規定に明記すべきだ。

これも具体例を明記しなかったJFAの不備の問題だ。

だからレッズやサポーターズグループの責任者を呼んで「危険だから3Dコレオを禁止する規定を作った。今後同じことをやれば罰金を200万円取る」と厳重注意すれば良いだけの話だ。

それなのに曖昧な規定だけを盾にして「浦和が悪い。罰金200万円」では、新しいチャレンジはもう出来なくなる。

規定を敢えて曖昧にし、新たな挑戦をする者を「会社に損害を与える危険が有る」としてペナルティーを与える。

この構図が残念ながら日本社会ではどこでも見られる。

そして日本では他人の失敗に厳しすぎる。

特に起業家の起業や新商品の発明なんて、山ほどの失敗が付き物だ。

失敗のない起業なんて有り得ない。
失敗のない新商品の作成も有り得ない。

それなのに日本人には1回の失敗をこれでもかと叩く者が多すぎる。

これではイノベーションは日本からは生まれない。
アリアナ・グランデだって心が日本から離れるわけだ。

今回の件で何が一番心配か?

それは新しい何かをサポーターがチャレンジしようとしても「よく分かんないけど規定でダメかも。レッズみたいに罰金取られる。やめとこう」という雰囲気が出来上がることだ。

世間を見るといい。

ケータイだ、スマホだと言っている時に「ウチは昔ながらの固定電話でいく」と言っているメーカーのいい話を聞いた事が有るか?

携帯でダウンロードして音楽を聴く様になって久しいこの御時世にCDショップはどうなっているか?

携帯でニュースを見る様になった今、キヨスクで紙の新聞を買っている人を最近見かけたか?

スマホを作る。
楽曲ダウンロードサービスを作る。
電子版ニュースサイトを作る。

こういう新たなチャレンジをしない所は、全部虫の息だ。

固定電話やCD、紙新聞に固執したメーカーは、今や絶滅危惧種となっている。

今回のJFAの処分は、日本サッカーを絶滅危惧種にしかねない危険性を秘めている。

レッズサポーターは確かに今まで事件を数々起こしてきた。

だがその全部が「浦和だけが悪い」と断定すべきものではないはずだ。

処分を下す側にも不備がある。
彼等は自分の非を認めない。
あたかも「そっちだけが悪い」と開き直る。

だからJFA絡みの処分に、多くのレッズサポーターが敏感に反応するんだ。

これでも「悪いのは浦和だろ」と他のチームのサポーターが言うならば、一度同じ立場に立ってみればいい。

曖昧な規定を盾に、海外で当たり前のように行われている行為を突然罰される立場になればいい。

その時、普段からロクに検証せずに「浦和が悪い! 浦和が謝れ!」とクソリプをよこす連中が「ウチらは悪くない!」とツイッターで主張したとしても、俺は助けない。

そいつらはその時、無実の罪で「ここのサポーターはアレだから」と陰口を叩かれ始める。

そんなモンは自業自得だ。
職場で四面楚歌になって友人を失って、思う存分苦しめばいい。

今回の件で「浦和は何も悪くない」とは言わない。
悪い部分は改めなければいけないし、改めれば良いことだ。

ただし「浦和だけが悪い」という風潮には、納得がいかない。

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