人の挑戦を笑うな

GK榎本哲也は15年間いた横浜F・マリノスを離れ、2017年に浦和レッズに移籍した。

その彼が、カターレ富山への移籍を決めた。

この2年間、彼はレッズでほとんど試合に出場していない。
最近はベンチ入りすらできていない。


2015年のオフにマリノスの体制が変わった。
榎本は残り1年の選手契約が更新されない見通しである事を伝えられた。

その状況を打破すべく、競争に則って公式戦で活躍した。
だがその年のオフに、フロントから打診されたのは「選手兼コーチ」だった。

その立場である以上、選手と同じ横一線での競争は無理。
自分はもう選手としては必要とされていない。

榎本はそう思っていた。
そこにミシャから声がかかった。
榎本はレッズに移籍した。

「西川からポジションを奪える」

この自信が無ければ、この決断はできない。
いかに当時のレッズの監督ミシャが人格者であったとしてもだ。

コーチとしてマリノスに残る選択を捨て、選手としての可能性に賭ける。

榎本のこの生き方はカッコいい。

選手兼コーチとしてマリノスに残れば、数年間はマリノスに居られる。

安住を選択する選手もいていい。
家族の事情でそうせざるを得ない選手もいるだろう。

選手としてプレーする事よりも、今所属するチームの一員である事の方が優先順位が高い者には移籍しない決断がある。
その決断は尊重されるべき。

レッズでも鈴木啓太や平川忠亮はそういう決断をした。

ただ、現役続行やステップアップにこだわるタイプの選手もいる。

移籍して自分の可能性に賭ける「挑戦」の選択肢も尊重されるべき。

榎本の場合は、マリノスに残れば主力選手であり続けるのは無理。
だがマリノスに残り「マリノスの一員」の座をキープし続ける事が出来た。
マリノスから年俸をもらい、家族を養い続けることもできた。

移籍先のレッズでは西川との競争に敗れた。
出場機会を失った。

あのまま浦和に残ってもコーチとして残るどころか、選手としての契約が切れたらそのまま追い出されてしまっていただろう。

彼は完全に挑戦の選択が裏目に出た。

挑戦だから、当然裏目に出ることはある。

サッカー選手にも当然そういう例はたくさんある。

中田英寿はペルージャからローマに挑戦し、出場機会を失った。
香川真司もドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドに挑戦をしたが、2年間でわずか6試合の出場に留まった。

レッズにも同様の例がある。
関根貴大はインゴルシュタットに挑戦したが、満足に出場できなかった。

逆に挑戦の成功例もある。

サンパウロFCの一選手だったカカーはACミランに挑戦し、リバウドから見事ポジションを奪った。
クリスティアーノ・ロナウドは母国のスポルティングからマンチェスター・ユナイテッドに挑戦し、その後は皆さんのご存知の通りだ。
長谷部誠はレッズからヴォルフスブルクに挑戦し、多少の紆余曲折はあったもののドイツのどこクラブでも主力であり続けている。

カカーが挑戦しなければ、セレソンの一員としてワールドカップに出場できなかっただろう。
クリスティアーノ・ロナウドが挑戦しなければ、世界中誰もが知る選手にはなれなかった。
長谷部がレッズに残っていればレッズサポーターからは間違いなく愛されていたが、日本代表の主将としてあれだけ長い間機能するのは難しかった。

挑戦しなければ、大化けする事は絶対にない。
だから人の挑戦を笑うな。


レッズはJ1上位のクラブにしては失点が多い。
西川のパフォーマンスには、正直満足していない。
埼スタで無失点で抑えた時にオーロラヴィジョンに「Nice Shut Out!」と掲げるレッズスポンサーの文化シャッターも、さみしがっているだろう。

西川だって調子が悪い時がある。

「榎本にもっと力があればなあ」

何十回こう思ったか。

榎本にはもっとピッチに出てほしかった。
西川が調子悪い時、ポジションを奪い取ってほしかった。

出場機会を求めて、J3のクラブにカテゴリーを落として移籍する。
これは恥ずかしい事じゃない。

「今の立場にいるべきだ」と思って安住を選ぶのも恥ずかしい事じゃない。

「今の立場にいてはいけない」と思いつつも、変化にビビって安住を選ぶのは恥ずかしい事だ。

サラリーマンにもそういう連中が山ほどいるだろう。
「この会社は潰れる」「この産業は斜陽だ」と言われ転職がチラつきながらも安住を選び、ある日突然会社を去らなければならなくなった連中を。

安住を選んで溺死するよりも、挑戦して強打して爆死する方がよっぽどマシだ。

選択が正しいかは、やってみなけりゃ分からない。

だから人の挑戦を否定するな。

※本ブログの広告からの収益金の1%を多発性硬化症や視神経脊髄炎の患者の支援団体であるMSキャビンに寄付いたします。

◆こちらの記事もオススメ
やっぱりサッカークラブははないちもんめ
浦和レッズへの加入を決めた杉本健勇について
日本のプロサッカーリーグのまとめ

Follow me!