天皇杯決勝を元日に開催すべきか否か?

子供の頃、明治神宮に初詣に親と一緒に行かされたものだった。
大混雑で中々行列が進まず、長い時間寒い思いをしていたのを思い出す。

御利益どころか、風邪をもらって帰るのが関の山だった。
だから子供の頃から、初詣を好きになれなかった。

それでも俺みたいに初詣を避けたがるのは少数派。
1960年代には元日の明治神宮に250万人もの参拝客が来ていたという。

「初詣帰りの1%でも、来てもらえないか?」

長沼健らの当日の日本サッカー協会の幹部が思案して、1968年度(つまり1969年)から始まったのが天皇杯決勝の元日開催だ。

1969年といえば、当然Jリーグなんか無い。

選手はほぼ全員アマチュア。

大企業のサッカー部の部員たちばかりだ。
彼らは良いプレーをしようが試合で勝とうが、収入が増える事はない。

本業と試合が重なれば、本業を優先しなければいけない立場だ。
たとえ天皇杯でもだ。

試合の日に仕事が入って、選手が天皇杯に出場できなくなる例がザラだった。
それで大会敗退の憂き目に遭っても、サッカーが本業でない以上はどうする事も出来ない。

それでも仕事が入らない日はある。

確実に仕事が入らない元日に重要な試合をする事こそが、選手に望まれていた。

選手にとって最も重要な事は「サッカーができる事」

ACLも無かったので、過密日程の心配もいらない。

この状況で天皇杯決勝を元日に開催するのは、正しかった。

ちなみに入場料収入は遠征費、滞在費などを除けば基本的に日本サッカー協会のものだった。

客がいくら入ろうが、チームへの収入は変わらない。

どこでやっても、社員だけは応援に駆けつける。
というより、社員以外の人がスタジアムに入っても、居場所がない。
Jリーグのサポーターに匹敵する人たちは、この当時の実業団チームには皆無だった。

準決勝や決勝でもない限り、どこでやろうが入場者数は非常に少なかった。
注目度の高い決勝以外は、完全に内輪の大会だった。

「選手に金を払ってプレーさせる」
「勝てば報奨金を出す」

こういう発想が、ほぼゼロだった。
勝っても負けても、給料は同じだった。

準決勝や決勝以外では、試合結果や入場者数で収益があまり変わらない。

つまり試合会場は、どうでも良い。

多くのサポーターを集めてまで地元開催にこだわる必要はなかった。
会場選定の基準を規定に盛り込む必要もなかった。

さて、1993年にJリーグが発足した。

Jリーガーはほぼ全員がプロだ。
選手はサッカーを本業とする。

金をもらってプレーする選手だらけのチームが生まれた。
そういうJリーグのチームが決勝に上がるようになる。

2003年にACLが発足して、状況は一変した。

天皇杯優勝チームは必ずACLに出場する。

つまりACLとの兼ね合いが問題になる。

ACLの本戦は、早ければ2月下旬に始まる。
プレーオフに参戦するとなると、2月の頭には公式戦で勝てるコンディションになければいけない。

ACL決勝進出チームは、過密日程でオフが極端に短くなる。

決勝までもつれてオフが削られるのは、日本代表選手だけではなく選手全員だ。

全員が短すぎるオフで怪我を治す事も出来ず、次のシーズンを迎える。

その結果、1年を通じて戦績が低下する。

2〜3月に国内リーグを始める他の国のカップ戦は、どんなに遅くても12月上旬には終わる。
事情がいくつも重なって大幅に日程が繰り上がった今年の天皇杯決勝の12月9日という日程ですら、アジアのカップ戦の中で最も遅い。

元日まで天皇杯を開催していれば、他のオフの長いライバルチームとのACLでの闘いで大きなハンディキャップを負うことになる。

サッカーで仕事する選手にとって、過密日程は死活問題だ。

勝たなければ、結果を出さなければ契約を打ち切られる。

選手にとって最も重要な事は「サッカーで勝つ事」

この状況で元日開催にこだわるのは、間違いだ。

嘘だと思うなら、元日開催をどう思うか選手に訊いてみれば良い。
元日開催を嫌がるか、言葉を濁すかのどちらかのはずだ。

準決勝や決勝でもない限り試合結果や入場者数で収益があまり変わらないのは、Jリーグ発足前と同じ。

ただしJリーグが有る以上、ホームでは大勢のサポーターが駆けつける。

Jリーグのクラブでは、普通は天皇杯の戦績も選手の査定の対象になる。

そうなると大勢のサポーターが後押しするホームでやる方がいい。
試合会場は非常に重要になる。

天皇杯の各賞の授与式で、田嶋が出てきた時だけブーイングが起こった。

Jリーグ発足前と発足後でこれだけ状況が変わっているのに、日本サッカー協会の連中はJリーグ発足前からのしきたりを変えようとしない。

もしかしたら大会規定は有るのかもしれない。
だがその規定は、誰でも閲覧できる公式サイト上にない。
会場の決め方が雑でも、その条文が世間からチェックされる事もない。

だから会場の決定の基準があやふやになり、サポーターから批判される。

それでも人の話を聞かない。
だから田嶋は嫌われる。

何も明確な理由なくハリルを切ったからだけではない。

元日開催にこだわり選手を休みなくこき使うのは、非常に酷い。

「元日に決勝をやらないと世間から注目されない」というのは嘘だ。

Jリーグだって年に数試合は地上波で放映されている。
天皇杯の決勝は1年に1度だけ。

だから日程は天皇杯決勝を放映しない理由にはならない。

優勝チームのオフを極端に短くして選手生命を短縮させれば、天皇杯をまともに闘うチームはなくなる。
つまり天皇杯の質の低下に結びつく。

「風物詩」という耳触りの良い言葉に騙されて、大会の本質を見失わないように切に願う。

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