「ここで引退したい」と思われるクラブになるために

山田暢久。鈴木啓太。平川忠亮。ラファエル・シルバ。

彼等はみな、浦和レッズの功労者だ。

彼等は口を揃えて「浦和で引退したい」と言ってきた。

暢久はその気になれば他のJ1のクラブでも主力でプレーできたはずなのに、浦和でスパイクを脱ぐことを選んだ。
啓太は「浦和以外に愛せるクラブはない」とまで言い切った。
これからサポーターに言葉を届ける立場の平川も、浦和での引退を選んだ
ラファは浦和でACLのタイトルを獲った右脚にACLトロフィーのタトゥーを彫り、「最後は浦和でプレーしたい」と言った

4人とも、チームの調子が悪かった時にサポーターから批判をまともに受けたことは1度や2度ではなかったはずだ。
その彼等にここまで言わせるものは、なんだろうか?

一方で、シーズンが終わってから移籍を発表するクラブもある。
最終戦どころか、そのシーズンのチーム合同練習まで終わってから、功労者の退団をクラブから公式発表する所もある。

早くから「もしかして今シーズンで」とサポーター同士で噂される。
最終戦になっても、なんの挨拶もない。
それでも諦めきれずに練習場に駆けつけても、何の発表もない。

で、選手が練習場にすら姿を現さなくなってから、活字だけで退団発表をクラブが済ませる。

そのクラブのサポーターは、どう思うだろうか?

「あの選手に一言も挨拶させないフロントはナニ?」
「出ていく選手に何も言わせないような冷たく酷いクラブを、今まで応援してたのか」

サポーターは間違いなく徒労感でいっぱいになる。

中にはこれで終わらなく、「フロントに裏切られた」と複数の功労者が思ったりブログに書いたりするクラブもある。

そんなクラブでは、どの選手も「ここで引退したい」とは思わないだろう。

「俺の力はこんなんじゃない」
「俺を追い出した奴等を、絶対に見返してやる」

こう心に誓うに違いない。

この2つの激しすぎる差は、どこから来るのか?

鍵となるのは、早めに退団を発表するフロントの行動だ。

浦和レッズの例を書けば、田中達也のレッズからの退団のお知らせも早めだった。

「俺を勇気付け、支えてくれる人がいる限り、サッカーを諦める訳にはいかない」
「俺はここから前に進む」

浦和愛に溢れながらも、プロのアスリートとしてのプライドも強く感じさせる挨拶だった。
そんな彼は、それからの6シーズンをアルビレックス新潟で選手としてプレーしている。

転職活動はスピードが命。
特に移籍出来る期間が決まっているプロサッカー選手の場合はだ。

野心のあるクラブは「良い選手を獲ろう」と動く。
良い選手は他のクラブより早く動かなければ、獲得なんてできない。

当然、早い時期に良い選手は争奪戦になる。
野心のあるクラブの獲得可能な選手の枠の中で、良い選手の枠は早めに埋まる。

いくら良い選手でも、退団のアナウンスが遅くなればなるほど他のクラブの枠が埋まっていく。
獲得に使える金もなくなる。

退団のクラブからの公式発表を早く発表するほど、思いやりのあるクラブだ。

逆に公式発表が遅いほど、冷たいクラブだ。

もっとも、そんなクラブに居ても力のある選手は、水面下で移籍先のクラブと既に話し合いを済ませているだろうが。

この2つのタイプのクラブが見事に別れているから、興味深い。

「どのクラブがどっち」と具体名を挙げる野暮な真似は、ここではしないが。

選手に「このクラブで引退したい」と思わせる。
サポーターに「このクラブには夢がある」と感じさせる。

その鍵は、こういう所に有る。

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