川口能活のこれからの人生に幸あれ

日本人なら誰もが耳にした事のあるゴールキーパーの川口能活が、今年限りで現役引退することについて記者会見を開いた。

彼はこれから指導者として若いゴールキーパーを育てていくと言う。

彼ならもちろん可能だ。
そうするのが義務だとも思う。

藤原和博の「100万人分の1理論」が有る。

競合相手のいないレアカードになれば、自分の人生は一生安泰だ。
自分がレアカードになるには、100万人に1人しか居ないような能力のある人材になる必要がある。

普通の人が1万時間かけて努力すれば、誰でも100人に1人の人材にはなれる。
専門学校に行って勉強して美容院に就職して見習いとして修行を積めば、1人前の美容師になれる。

ただ、美容師自体は100人に1人程度の人材だ。

美容院はそこら中に掃いて捨てるほど並んでいる。
競合が多く競争の熾烈な業界では、いつ店が潰れるか分からない。
「単なる美容師」というだけでは、一生飯を食っていくのは難しい。

そこでその美容師がブログを始めたとする。

自分のウェブサイトに広告を貼り付けて、ブログに投稿した。
これだけで、いきなり収入が入ってくるわけがない。

投稿を繰り返して試行錯誤を重ねる。
書くネタが徐々に洗練されていく。
読む人が読みやすい文章を書けるようになる。

この過程で自分のブログが段々と一般客の目に留まっていく。
「物を書ける美容師だ」と認知される。
「あのブログを書くあの人の店に行こう」と、ブログで客を呼べる美容師になる。

100人に1人の人材である美容師。
100人に1人の人材であるブロガー。

それを掛け合わせると、ブロガー美容師になる。

100×100=10000
1万人に1人の人材だ。

これでファッション業界の中では、かなり有利に立てる。
数年は、いや十数年は安泰だろう。

ただその立場で「一生安泰か?」と訊かれると、まだ心許ない。

大不況に陥れば美容院の数も減る。
ブログを見て広告の商品を買う人も減る。
ブロガー美容師としての生活が成り立たなくなる場合もあるだろう。

ここでブロガー美容師が、趣味としてビーチコーミングを始めたとする。

コレクション目的で、海岸に落ちている貝などを採取する。
最初のうちは家に持ち帰った貝や魚の処理に失敗して、せっかく拾ったものを駄目にすることがある。

これも経験と試行錯誤を重ねるうちに、コツが分かってくる。
ちゃんと鑑賞に耐えられる物を拾えるようになっていく。

そのうち自分の店に貝のコレクションを飾るようになる。
「オシャレや店ね」と評判になる。
ビーチコーミングの腕が熟練すると、拾った貝を商品として自分の店で売れるようになる。

美容師として腕がいい。
味のある文章を書くブロガーでもある。
店の中には趣味として集めたセンスの良い貝もある。

美容師×ブロガー×ビーチコーマー
100人×100人×100人分の1

100万人分の1の存在だ。

どんな人間でもスペシャルな3つのことを掛け合わせれば、オンリーワンの人材になれる。

さて、町のサッカー大会でやたら腕のいいゴールキーパーがいるとする。
その人はサッカーが好きで、学校が終わったらひたすらキーパーの練習をしているとする。

それだけでは、腕としては100人分の1の人材だ。
どこにでもいる腕のいいゴールキーパーに過ぎない。

これがJリーグに入団して、正GKとして毎試合ゴールマウスを守り、生活できるだけの稼ぎを得られるようになったとする。

ここまで来れば、腕としては100人に1人どころではなくなる。

Jリーグには、クラブの数だけ正GKがいる。
現在、Jリーグには57のクラブがある。

今現在、公式戦でゴールマウスに立つゴールキーパーだけでも57人はいる。
過去に正GKとして活躍した人も含めると、膨大な数に登る。

Jリーガーとしてゴールマウスに立ったことがある人は1万人に1人程度の人材になる。

これだけでは、選手を引退したらコーチの様な選手業の延長のような仕事で生活するのは難しくなる。
だから多くのJリーガーは引退すればサッカーと無関係の仕事を始める。
現役時代から副業を意識するゴールキーパーもいるに違いない。

川口はゴールキーパーとしては100万人に1人の貴重な人材だ。

彼ならばGK業だけで一生生きていける。

ここでのGK業とは試合でゴールキーパーとしてゴールマウスに立つことだけを指すのではない。
ゴールキーパーコーチとしてゴールキーパーを指導したり、ゴールキーパーのやり方やゴールキーパーとしての経験を本に書いて販売することもGK業の範疇に入る。

ワールドカップでゴールマウスに立った日本人は3人しかいない。
川口はその3人のうちにもちろん入る(他の2人は楢崎正剛と川島永嗣)。

現役時代に感覚だけでプレーしたり根性だけで乗り切ったりしてきた人は、指導者の立場になるとなかなか結果を出せなくなる。
自分の言葉を持たず、試合中に次々と起こる問題に対して的確な解決策を迅速に出せなくなってしまう。

その点、川口は決して感覚や根性だけを頼りにしてきた訳ではない。

ポーツマス時代、彼は不遇の時を過ごした。
苦悩から抜け出すにはどうするかを考えて試行錯誤する過程で、自分の言葉を持つようになる。

指導者は自らピッチに出て試合に参加できない。
自分の言葉で選手を動かさなければならない。
だから自分の言葉が必要だ。

彼は日本代表としての経験も豊富だ。
代表での事も教えられる人材だ。

アクもプライドも強い選手とどう向き合うか?
異国での洗礼とどう向き合うか?
大舞台でベンチ要員にされた選手にどんな声をかけるか?

彼ならば、こういう事に効く処方せんを出せるはずだ。

川口のこれからのGK業としての人生に幸あれ!

なお川口が所属するSC相模原の今年の最終戦は12月2日(日)に相模原ギオンスタジアムで開催予定。



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