レッズサポの俺が鹿島サポだらけのバーに行ってみた

浦和レッズは去年、ACLを制覇した。

その晴れの試合を、2試合とも日本テレビは地上波での生中継を拒否した。

サッカーへの、Jリーグへのリスペクトの全くない日テレへの抗議の意味を込め、俺は日テレジータスの有料契約を解約した。

今年のACL決勝も、例によって例のごとく地上波では生中継せず。
リアルタイムで家で観たければ、スカパーの日テレに有料契約するしかない。

俺は有料契約していない。
それでも決勝第2戦での、どうしてもACLで優勝チームが決まる瞬間を、どうしても生画面で確認したい。

そんな訳で、スポーツバーに乗り込んでみた。

俺が乗り込んだのはレッズのある埼玉県でも鹿島のある茨城県ではない、関東の某スポーツバー。

そこはJリーグの某クラブのお膝元。
俺にとっても鹿島サポーターにとっても、本来なら大アウェーの環境だ。

そんな場所に、立錐の余地も危ういほど大勢の鹿島サポーターが詰めかけている!

まだ試合が始まってもいないのに、満席。

鹿島サポがアウェージャックしている。

Jリーグの某クラブのお膝元に、こんなに鹿島サポーターがいたとは。

鹿島が人気があるのは間違いない。
逆に言えば、その某クラブが人気が無いとも言えるが。

さて、スタジアムの場面が大写しになったら、店中で大歓声。

俺も去年は埼スタでこんなんだったな。
なんだかとっても懐かしい。

それとともにテレビから

「ブウウウウウウウウウウウウウウウウ」

うるさいっ!

ブブゼラの音がやかましい。

この日の入場者数10万人は、ACL記録だと言う。

10万人と言えば、レッズの本拠地埼玉スタジアム2002と鹿島の本拠地カシマスタジアムの収容人数を足した数だ。
どちらのスタジアムも日韓ワールドカップで使用される程の、日本を代表するサッカー専用スタジアムだ。
その両方を埋める程のペルセポリスサポーターが、1箇所に同時に集まって鹿島の選手を取り囲む。

そんな連中が大勢でラッパのしゃがれた様なモンをフルボリュームで鳴らせば、そりゃうるさい。

去年同様スタジアムDJが「three, two, one」とキックオフカウントダウンをしているはずだが、そんな声など聞こえてこない。
とにかくブブゼラの音がうるさい。

そんな中でいよいよキックオフ。

泣いても笑っても、あと90分で全てが決まる。
鹿島サポーターの歓喜の咆哮で店が埋め尽くされるのか?
それとも断末魔の悲鳴で覆われる阿鼻叫喚の修羅場と化すのか?

両チームとも、そんなに硬い動きはしていない。
22人が完全に試合に集中しているのが見て取れる。

それでもどうしてもペルセポリスの選手がボールを持つ時間帯が長い。
埼スタとカシマスタジアムの2箇所の座席分の10万人のペルセポリスサポーターに囲まれれば、どうしてもプレッシャーがかかるだろう。

しかもJリーグでよくある抑揚のあるチャントが、テレビから聞こえてこない。
現地の鹿島サポーターは必死に声を絞っているのだろうが、ブブゼラの音に完全にかき消されている。

何があっても、ひたすら「ブウウウ」

とにかく異様だ。
調子が狂う。
ブブゼラの文化はサウジアラビアでさえ無かった。

そのブブゼラだが、鹿島の選手がボールを持つと途端に音量が大きくなる。
一番大きくなるのが、鹿島のGKクォン・スンテがボールを持っている時だ。

俺も埼スタでは敵の選手がボールを持っている時は、ブーイングする。
敵のGKがボールを握って時間稼ぎをしている時は「さっさとボールを動かせ!」「ミスしてオウンゴールしちまえ!」という意味を込めてブーイングの声を大きくする。

そう。イランではブブゼラはブーイングとして使われている。

日本でもJリーグが開幕した時は、ブブゼラではないがそれに近いチアホーンをサポーターは吹いていた。
キャプテン翼で出てくるラッパの様な音のアレだ。

Jリーグのスタジアムでは近隣に住宅や会社が有る土地柄が多い。
すぐにチアホーンはスタジアムから締め出された。

イランのアザディスタジアムは、家とかビルとかが何もない砂漠のど真ん中にでもあるというのか?
そう言えば去年のACL決勝第1戦の会場の、サウジアラビアのキングファハド国際スタジアムも、砂漠のど真ん中に突然作り出した様な場所にあった。

ハーフタイム。
スコアは0-0。
鹿島サポーターのつかの間の安堵の表情が目立つ。

後半開始。

この大会にはアウェーゴールルールが有る。
合計得点が引き分けなら、敵地でのゴール数が多い方が勝ち抜くルールだ。

第1戦では鹿島は2-0の優勢で終えていた。
鹿島は1点でも獲ると、相手は残り少ない時間で4点獲らないと優勝できなくなる。
1点奪えば、相手を色んな意味で追い詰められる。

その1点が獲れない。

両ゴールキーパーのスーパープレーが目立っている。
鹿島がゴールを脅かす度に、ゴールキーパーが立ちはだかり鹿島サポーターにため息をつかせる。

それどころかペルセポリスが深くまで攻め込む場面も目立ってきた。
それを鹿島のGKが防ぐ度に、割れんばかりの拍手が店を埋め尽くす。
チャントを歌って悪夢の回避を願う店内の鹿島サポーターの姿も目に付いてくる。

そんな中、時計は進む。
アディショナルタイムは4分。
後半の追加タイムにしては、標準的な長さだ。

この4分が、鹿島サポーターにとっては永遠のように長く感じられたのではないか?

あと4分守り切れば、鹿島サポーターにとって悲願のACL初タイトルを掴める。

だがその4分が危うい。
ピンチの場面がとにかく多く、本当に鹿島の選手がACLトロフィーを掲げる姿が思い浮かばない。
コーナーフラッグ付近でボールを持ち続けて時間を潰す鹿島の伝統芸の「鹿島り」なんて、とても期待できる状況じゃない。

タイムアップの笛が鳴った。

それと同時に鹿島サポーターの割れんばかりの咆哮が店中に轟いた。

俺は長年サッカーを追ってきた。
こんな凄いスコアレスドローの試合なんて、記憶にない。

そこらじゅうで、あちこちで鹿島サポーターがハイタッチを交わす。
鹿島サポーターにとっては20冠目の初タイトルを掴んだ瞬間だ。
俺も去年はこんなんだったのか。

自然発生的に鹿島サポーター同士が肩を組み、オブラディオブラダを歌い出す。

この曲は、俺にとってはビートルズの曲だ。
鹿島サポーターにとっては、勝利の凱歌だ。

こんなに間近にあの「オブラディオブラダ」を目にしたのは、初めてだ。

それでも当然ながら、俺はどうしても嬉しい気持ちにはなれない。
鹿島サポーターのはしゃぎぶりは、俺にとっては他人事だ。

「嗚呼、俺はレッズサポーターなんだ」

そう痛感せずにはいられなかった。

鹿島サポーターが熱く喜び合うなか、俺は完全に冷めていた。

次こそは、来年こそはレッズがあの場所に帰るんだ。
Jリーグで天皇杯で結果を出して、ACLの場に戻るんだ。
そして誰も成し遂げていない3度目のアジア制覇のトロフィーを、レッズの選手が掲げる瞬間をこの目で見届けるんだ。

そのために、目に焼き付けておく必要が有ると思った。
にっくきライバルチームがトロフィーを掲げて喜ぶ姿を。

観客席の表彰台に鹿島の選手が上がっていく。
チームキャプテンの昌子が、一旦は優勝トロフィーを手に持つ。
そのトロフィーを、誰よりもこのタイトルに飢えていたであろう小笠原に渡す。

小笠原がトロフィーを掲げた。
テレビの中の鹿島の選手も、テレビの外の鹿島のサポーターも両腕を突き上げて吼えた。

この姿を、俺は絶対に忘れない。

レッズの選手が苦しむ時は、これからも訪れる。
そんな時にこの姿を思い出し、俺は選手にハッパをかける事にする。
「優勝したくねえのかよ?」「ライバルにタイトルをさらわれても良いのかよ?」と。

俺はサッカーバーを後にした。

午前2時半。
辺りは真っ暗。
人もまばら。

急に現実に帰った。

やっぱりACLは観るモンじゃない。出るモンだ。

次こそは。
次こそはっ!



※本ブログの広告からの収益金の1%を多発性硬化症や視神経脊髄炎の患者の支援団体であるMSキャビンに寄付いたします。

◆こちらの記事もオススメ
売られた喧嘩を買いに行く
イランのプロサッカーリーグのまとめ
日本のプロサッカーリーグのまとめ

Follow me!